概要 良いチームを作るための法則を大きく5つに分けて解説している。科学的な根拠となる論文等も一緒に紹介されている。
要約
第一章 Aim(目標設定)の法則
- 共通の目的(目標)を持った集団がチームである。目的が無ければそれはただのグループ。
- 目標には3種類ある(例はTHE TEAMの執筆チームの目標)
- 意義目標(日本全体のチーム力を高める)
- 成果目標(10万部売る)
- 行動目標(チームの法則を事例を交えてわかりやすく伝える本をつくる)
- 意義目標の方がブレイクスルーが起きやすく、行動目標の方がアクションが分かりやすい
- チームメンバーが自分で考え動くことができるのであれば1を、そうでなければ3を設定すると良い。もちろん、複数組み合わせて設定してもよい。
- ただし意義目標が無いと、単純に作業をやるだけになってしまいがち。意義目標も設定することが推奨される。
- 自分がチームに目標を設定する際はそれぞれの目標がうまくつながっているか、それを日々意識できているかをチェックすべし
第二章 Boarding(人員選定)の法則
- メンバー選びは非常に大事。それと同様に、誰を外すかも非常に大事。
- Boardingを語る上では、チームを4パターンに分けて考える
- メンバーが入れ替わらないチームがいいチームだ、とは一概に言えない
- 環境の変化が多いチーム(柔道型、サッカー型)では、チームの入口出口どちらものハードルを下げ、その都度適応するチームを作るのが大事
- 逆に環境が変わらなければ厳選採用するのが大事
- 自分のチームの流動性に応じてどのように入口出口のハードルを設定するかを考えよう
- 多様性のあるチームが良い、とも一概には言えない
- 例えば人材の連携度合いの低い(柔道型、駅伝型)、個人で完結するタスクの場合は、それが得意な同じような人材を集めた方がよい。
- ただし、最近では多様性のあるチームの重要性が叫ばれることが多いのも事実である。これはビジネスが第二次産業から第三次産業へ移ってきているため、環境の変化の度合いが大きい仕事(対人の仕事)が増えてきていることが理由だと考えられる。
第三章 Communication(意思疎通)の法則
- チームの行動をコミュニケーションだけで決めようとするとかなりの手間がかかる
- 適切なルールを設定することで、必要なコミュニケーションだけをとることができ、チームの効率があがる
- ルールが少なすぎても、多すぎてもコミュニケーションが増えてしまうのでうまくバランスをとるべき
- 以降、ルール設定のポイントを4W1Hに沿ってまとめる
ルールの設定粒度(What)
- 人材の連携度合いが少ない(柔道型、駅伝型)チームはルールは比較的少なくして済むはず。なぜなら、ルールは人と人が連携するときに必要になるものだから。
- 環境の変化度合いが大きい(柔道型、サッカー型)チームはルールを細かく設定する必要がないはず。なぜなら、環境が変わってしまえばルールが活用できなくなる可能性が高い。
設定粒度について意識をしながら、まずは基本となる最初の4つのルールを決めていく。
権限規定のルール(Who)
- 「誰がどこまで決めていいのか」ということをまず決めなければならない
- メンバーがどこまで自分で判断してよいのか、どこからチームとしての判断を仰ぐべきなのかを明確にしておかなければ、チームの活動効率が下がってしまうため、それを決めておくべきである
- 人材の連携度合いが小さい活動は、メンバーが自分の活動について自分で決めても問題はあまり生じないはず
- 環境の変化度合いが大きい活動はメンバーが自分で決めたほう良い。なぜならいちいちリーダーやチームに判断を仰いでいると、状況変化にスピーディに対応できないため。
- それぞれのチーム状況を鑑みながら、「誰が何を決めていいのか?」という権限規定に関するルールを定める必要がある
責任範囲のルール(Where)
- 誰がどの範囲の責任を持つのかを決めなければならない
- 環境の変化度合いと人材の連携度合いが大きいほど個人ではなくチーム全体に対する責任を負うように責任範囲を定めたほうがよい
評価対象のルール(How)
- 環境や人の連携度合いによって、何を評価すべきかが変わる。何を見て評価すべきか、というルールを決めるべき。
- 例えば、人の連携度合いが低いことであればひとりひとりの成果をそのまま評価すればよい
- 連携度合いが高ければひとりひとりの成果では判断しづらいため、各々のプロセスやアクションで評価すべき
- 環境の変化が大きい場合は、どのようなアクションをとったかで判断するのは難しく、結果で評価すべき。逆に変化が小さければプロセスでの評価も可能。
確認頻度のルール(When)
- 評価をどれくらいの頻度で確認するのかを定めよう
- 環境の変化度合いが大きいか、人材の連携が重要な場合は頻繁に確認しよう
コミュニケーションと感情
- コミュニケーションは短い方が良いとされるが、感情の観点からは時に長くなってもよい。
- 「どうせ、しょせん、やっぱり」というチームに根付くネガティブな感情を無くすには、「自分が相手/チームから理解されている」と感じると各々が感じることが重要
- 自分が理解されていると人が感じるためには「経験」「感覚」「志向」「能力」を理解してもらうことが必要
- 「経験」と「感覚」を理解するには、横軸に時間、縦軸にモチベーションを取ったモチベーショングラフが有用。経験とそのときの感覚(どう感じたか)を共有しやすい
- 「志向」は4つのタイプのどれにあてはまるかをチェックしてみよう
- 「能力」は対自分力、対人力、対課題力のそれぞれがどちらのタイプかをチェック
- 「志向」と「能力」についてもチーム内で共有して今後のコミュニケーションにいかそう
心理的安全性
- 心理的安全性が確保されていれば、問題を解決する積極的な発言や行動を引き出すことができる
- 心理的安全に支障をきたす原因は4つ
- 無知と思われる不安 -> 対策:率直に質問しても良いとされる場を設ける
- 無能と思われる不安 -> 対策:失敗共有機会を設ける。失敗が悪くない、失敗から学ばないことが悪い、という意識を根付かせる
- 邪魔と思われる不安 -> 対策:意見が生まれること自体が良いことという意識を根付かせる。「今の言う意味あった?」は厳禁
- 批判的と思われる不安 -> 対策:反対意見機会を設ける。「それは絶対違うでしょ」は厳禁
第四章 Decision(意思決定)の法則
意思決定方法
- 方法には3つある。
- 独裁
- 多数決
- 合議
- これら3つは、チーム全体の納得度とスピードがトレードオフの関係になっている。チームによってどれが適切かを選ぶ必要がある
合議
- 合議は意思決定速度が遅い。つまり、速く結論を出すことが重要になる
- 何かを決めるときは、まずは選択肢を決めること。なんとなく答えを探すよりスピードが出る。
- さらに、その選択肢同士を直接比較するのではなく、選択基準と、その基準の優先度を決めれば速く結論までたどり着ける
独裁
- 圧倒的にスピードが出るが、チームの納得感を増すために情報収集は重要だが、意思決定時に「正しい」決定にこだわるよりも「強い/速い」決定にこだわるべき
- だいたい意思決定に悩むような事柄は、メリット・デメリットが拮抗している。それならばできるだけ速く決定し、実行に移すべき。早くとりかかれればそれだけ成功する確率も高まる
- また、独裁を成功させるのに重要なのは意思決定者だけではなく、チームメンバーの協力が大事。チームとして成果を出したければ一度決定されたのなら「たられば」を言うのは効果的ではない
- チームメンバーが独裁に協力するかどうかは独裁者の特性(影響力)による
- 影響力は5つに分解できる
- 専門性:メンバーに「すごい」と思われる技術や知識がある
- 返報性:メンバーに「ありがたい」と思われる支援や関与をしている
- 魅了性:メンバーに「すてき」と思われる外見/内面的魅力がある
- 厳格性:メンバーに「こわい」と思わせる規律と威厳がある
- 一貫性:メンバーに「ぶれない」と思わせる方針と態度がある
第五章 Engagement(共感創造)の法則
エンゲージメントの4P
- エンゲージメント=チームに貢献しようとするモチベーション
- エンゲージメントを高める4P
- Philosophy(理念・方針)
- Profession(活動・成長)
- People(人材・風土)
- Privilege(待遇・特権)
- 上記4つのうち、どこに力を入れてどのような色のチームを目指すかを決めよう
- どのPを伸ばすかによって、メリット・デメリットがある。例えば、Professionで束ねる場合は、どのような仕事をアサインするかといったことには気を使うべきだが、業務外での上司と部下の懇親コストを減らせる傾向にあり、Peopleはその逆になりやすい。
エンゲージメントを生み出す方程式
- 報酬・目標の魅力 ✕ 実現可能性 ✕ 危機感
- 実現可能性は、目標を細かなステップに分けることで見えるようになる
感想
- いろいろためになった。特に心理的安全性を確保するためにどうすればよいか、エンゲージメントはどうすれば高まるのかは参考になった。
- 影響力の5つの要素は自分の会社のリーダーや社長を分析するのにいいツールだと感じた。
- 第三章は最初意味不明過ぎた。ルールを決めるからそれを決める際のポイントを4W1Hでという話かと思ったら違った。Who以降は、まず最初に決めるべきルールはこういうのがあるよって話。
- 第五章は4Pと方程式をすごく密接に本では表現していたがまた別の話では?と思った